【名盤】若き小澤のチャイコフスキー『悲愴』

名盤レビュー

小澤征爾の悲愴。1966年、30歳の小澤征爾がボストン響を振った作品。カラヤンやバーンスタインや巨匠がひしめく中、若手の日本人が指揮をしてセッション録音が出るというのは本当にすごい。それもレパートリーがド直球の悲愴なのだから。

第一楽章から聴かせる。ボストン響の豊かな弦楽器に安心して身をゆだねられる。そこにやさしくオーボエがメロディを奏でてくる。かと思うと曲調は一変し、激動の時代が到来する。トロンボーンの咆哮が強力に鳴り響く。速いテンポになってもアンサンブルがしっかりしている。

第二楽章はやや明るくなって弦楽器と管楽器の掛け合いが軽妙だ。ピチカートの使い方がいかにもチャイコフスキーらしいにくい使い方だ。

第三楽章は悲愴の中では最も明るい楽章。管楽器と弦楽器が掛け合いつつクレッシェンドになるのを小澤は首尾よくコントロールしている。それぞれの楽器の音が非常に見通し良く聞こえてくる。オーケストラとして各パートの実力が問われる楽章だがボストン響のレベルの高さが伺える。第四楽章がなくても成立したんじゃないかと思える気持ちの良いフィニッシュ。

そして悲愴を悲愴たらしめる第四楽章。途中、よく聞くと小澤が唸っているように聞こえる。非常に情感のこもった、単に心を揺さぶるだけでなく寄り添ってくれるような演奏だ。

レコーディング:26 April 1966, Symphony Hall, Boston

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