20世紀半ば、アメリカで活躍した指揮者、ジョージ・セルは特にクリーヴランド管弦楽団とのタッグにおいてその完璧なアンサンブルと端正な演奏で知られているが、実はライブになると白熱した演奏を繰り広げる。こちらのCDで聴くことができるのはまさにそうした演奏の一つ。
録音状態は必ずしも良いわけではないが比較的良好なステレオ録音で鑑賞には十分。管楽器の響きも非常によく取れている。何よりジョージ・セルの数少ないチャイコフスキーの演奏の一つであり、その上ライブと来ているのだから聞かないわけにはいかない。ジョージ・セルファンの皆様はよくご存じだと思うが、セルはライブになると本当にアツい。オーケストラをグイグイ引っ張っていくのだが、それに応えることができるだけのクリーヴランド管の基礎体力も実に見事だ。
まず悲劇的な第一楽章。クライマックスの盛り上げ方と容赦ない金管楽器の咆哮はライブならではだ。その迫力には息をするのも忘れそうになる。
第二楽章は一転してゆったりしたテンポだが、なんとも哀愁漂う表現が素晴らしい。
第三楽章のスケルツォは一糸乱れぬ快速ピチカートに始まり、管楽器のアンサンブル、そしてまたピチカート。5分15秒というのは最短の部類に入るが早すぎるということは全然ない。
そして最後の第四楽章。華々しく始まるアレグロはドライブ感が実に心地よい。セルといえども決してインテンポというのではなく、タメるところはタメている。最後のクライマックスの超快速でもオケに破綻がないのはさすが。これを聞いて感動しない人間なんているのかと思える圧巻のフィナーレ。会場の拍手に合わせて思わず拍手したくなること間違いなし。
カップリングされているヴェルディの『運命の力』はジョージ・セルの録音としてはおそらくこれが唯一のもの。これまたアツアツで物凄い演奏だ。オーケストラも指揮者も脂がノリノリでその充実感から黄金時代と呼ばれるのも納得の出来。ホントに痺れる演奏なのでぜひ聴いてみてください。
レコーディング: 5/Jan./1968, Severence Hall, Cleveland
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